四方投げの「表」と「裏」

四方投げは、相手の手首を掴み、自分の頭上に振りかぶってから、文字通り四方八方のいずれかへ投げ落とす技です。相手の崩し方によって「表」と「裏」に分かれます。

1. 四方投げ【表】(直進と入り身)

相手の前面を切り裂くように、真っ直ぐ踏み込んで投げる動きです。

  • 動きの特徴: 相手の攻撃を捌いた後、相手の懐(ふところ)の深い位置へ一歩大きく踏み込みます。相手と胸が合うような位置関係から、最短距離で相手の背後へ突き抜けます。
  • 理合(強さの秘密): 開祖の初期の技に見られるような「一重身(ひとえみ)」の鋭さが求められます。相手が体勢を立て直す隙を与えず、正面から圧倒する「陽」の技です。
  • イメージ: 荒波を真っ二つに割って進む船のような、力強く直線的な動きです。

2. 四方投げ【裏】(転換と円転)

相手の側面に回り込み、体を入れ替えて投げる動きです。

  • 動きの特徴: 相手の手を捌くと同時に、自分の体を軸にして180度大きく入れ替える「転換」を行います。相手の死角(背中側)へ入り込み、螺旋を描くように振りかぶります。
  • 理合(強さの秘密): 相手の力を円運動の中に巻き込み、遠心力と重力を利用して投げ落とします。相手の力を無効化する「陰」の動きであり、柔軟な体捌きが不可欠です。
  • イメージ: 渦潮に巻き込まれた木の葉のように、相手を自分の回転の中心に引き込み、足元へ沈める動きです。

【当道場における四方投げの指導】

四方投げは、合気道の基礎である「足運び」「手刀の使い方」「腰のひねり」のすべてが含まれています。

  • 「剣」の理合: 当道場では、剣での素振りと四方投げを関連付けて指導します。振りかぶる動作が「剣」と同じであることを理解することで、技の威力と精度が格段に上がります。
  • 初期の激しさの継承: 投げる瞬間の鋭い沈み込みや、相手を制する際の「残心(ざんしん)」を重視します。特に入り身の鋭い「表」の技では、古流の武術が持っていた厳しさを体感できます。
  • 安全への配慮: 四方投げは手首の関節を制する技であるため、中学生以上には技の理合いを深く教える一方、小学生には「相手を痛めつけない、思いやりのある持ち方」を徹底して指導します。