合気道の稽古の最後(あるいは最初)に必ず行われる「呼吸法」。これは単なる筋力トレーニングではなく、相手と自分の呼吸を合わせ、大地からの力を指先に通すための「理合」を学ぶ最も大切な稽古です。
ここにも、相手との位置関係によって「表」と「裏」の明確な違いがあります。
1. 呼吸法【表】(入り身の理)
相手の懐(ふところ)へ真っ向から入り込んでいく、陽(よう)の動きです。
- 動きの要諦: 相手の持っている力に対して、正面からぶつかるのではなく、相手の肘の内側を切り上げるようにして、相手の中心に向かって鋭く踏み込みます。
- 身体の使い方: 自分の背筋を伸ばし、腰の力を指先に伝えます。開祖が説かれた「入り身」の精神そのものであり、一瞬の隙を逃さず相手のバランスを制する力強さが特徴です。
- 学び: 相手の抵抗を無効化し、自らの意思を真っ直ぐに通す「不動の心」と「爆発的な集中力」を養います。
2. 呼吸法【裏】(転換の理)
相手の力を受け流し、円の動きで死角へ導く、陰(いん)の動きです。
- 動きの要諦: 相手が押してくる力を、自分の軸をわずかにずらして受け流します。相手の手首を支点にして、円を描くように大きく自分の体を入れ替え(転換)、相手の背中側へと力を逃がします。
- 身体の使い方: 螺旋(らせん)状の動きを用います。力で抗うのではなく、相手の力を利用して自分の一部に取り込むような、しなやかな転身が求められます。
- 学び: 相手と争わず、自分を無にして相手を導く「調和」と、柔軟な「変化の心」を養います。